QDAソフトとは?


QDAソフトCAQDASの概念図。質的データを取り込み、「データ管理」「分析支援」「可視化」の主機能で分析・解釈を支援します

QDAソフトは効率の良いデータ整理、分類を実現し、人間の分析・解釈を支援します

 

QDAソフト*1は質的研究を支援するソフトウェアです。CAQDAS*2とも呼ばれています。

QDAソフトは質的データを効率的に扱い、研究・調査を支援するためのソフトウェアです。大量のテキストや、様々な形式の質的データに対して深いレベルの分析を必要とする質的研究・混合研究法の研究者を対象として開発されています。

現在、世界中の質的研究をおこなう研究者が使用しており、多様・大量のデータを扱う現代の質的研究においては必須ソフトウェアといえるでしょう。特に、海外の研究者にとってQDAソフトは、量的調査において使用されるSPSSやSTATAなどの統計ソフトに匹敵するくらいに馴染みのあるものになっています(佐藤郁哉,2015)。

*1 QDA - Qualitative Data Analysis -質的データ分析

*2 CAQDAS - Computer Assisted/Aided Qualitative Data Analysis Software -質的データ分析支援ソフトウエア

大量の質的データを効率的に扱い、ストレスのない質的研究をPC上で実現する QDAソフト

QDAソフトCAQDASの概念図。質的データを取り込み、「データ管理」「分析支援」「可視化」の主機能で分析・解釈を支援します。

「データ管理」「分析」「可視化」のフェーズをシームレスに行き来することが可能になります。

質的研究では質的データを扱います。質的データはテキスト、インタビューなどの直接数値で測定できないデータです。質的データとは対照的に、数値データを使用したものは量的データと呼ばれます。混合研究法(ミックスメソッド)では、この質的データと量的データの両方を扱います。

QDAソフトは質的データを効率的に扱い、研究・調査を支援するためのソフトウェアです。大量のテキストや、様々な形式の質的データに対して深いレベルの分析を必要とする質的研究・混合研究法の研究者を対象として開発されています。

その設計思想は研究者が質的データを解釈し、それらに対してコード化・カテゴリー化を行い、そこから重要な概念を見つけ出すという、グレイザーとストラウスの提唱するグラウンデッド・セオリー・アプローチ(GTA)に基づいており、以下の機能を備えています。

  • ・データ管理機能
  • ・テキストデータ中の選択された部分に簡単にコードを付けるための機能
  • ・作成済のコードを効率良く検索・再利用するための機能
  • ・コードとカテゴリーとのリンク関係を管理する機能
  • ・コードやカテゴリーの関係性を視覚的に提示する機能

QDAソフト登場当初は、一部の専門家からQDAソフトはグラウンデッド・セオリー・アプローチに影響されすぎているのではないかという指摘もありましたが、ソフトウェアが改良され、洗練されていくに従って、特定のアプローチとの結びつきは薄くなっています。

現在ではグラウンデッド・セオリー・アプローチ以外の研究手法でも幅広く使用されており、様々な質的研究に使用することが可能です。

質的分析の際、煩雑な作業に時間を取られていませんか?

QDAソフトを使用すれば、ノリとハサミを使っていたカードの複製作業などは不要です。メモの追加、コード化、カテゴリー化、オリジナルの文脈の確認等も簡単です。

データの複製、検索も容易なので、コピーを取る必要もなく、保管場所も不要です。紙ベースでの作業と比べて大幅に効率化が可能です。

物理的な制約から解放されることにより、文書データの量が多い場合でもシステマティックな分析が可能です。

また、抽出したテキストの原文の確認をしたい場合、その根拠となる箇所に簡単に戻って確認できます。紙資料はもちろん、ワープロソフトや表計算ソフトでも抽出したテキストの原文にすぐに戻ることはできませんがQDAソフトを使用すると、カンタンに戻ることができます。

コーディング(抽出)しても元のファイルはそのままなので、コーディング用ファイルの作成や加工の手間もゼロです。

QDAソフトを導入することで、扱いの難しい質的データを効率的に扱うことが可能です。

QDAソフトの主な機能とメリット

QDAソフトの主な機能には以下のものがあります。

・データ管理・データ整理

様々な形式のデータをQDAソフトで一元管理が可能。

QDAソフトでは、文章などのテキストや音声、動画、画像、ウェブページ、スプレッドシートといった多様な形態の質的データを一括して管理すると同時に、注目したいデータ部分にラベルを張る「コーディング」と呼ばれる作業を中心に、種々のデータ整理を行うことができます。

取り込んだデータは簡単に検索することが可能です。また、データファイル、データ内部にメモを付けることも可能です。

・コーディング

NVivoではコーディングから元データへと、クリックひとつでシームレスに行き来が可能。コーディングからの元の文脈の確認も一瞬です。

紙と手作業によって分析を進める場合、データのセグメント化を行うには、インタビューのトランスクリプション等のデータ全体の印刷物から、特定の部分をハサミで切り取る必要があります。

また、オリジナルのデータを残すためにはコピーを取る必要もあります。Wordやエクセルといった汎用のソフトウェアを使う場合でも、トランスクリプションのデータファイルから切り取りたいデータ部分をコピーして、分析作業用のファイルにペーストする必要があります。

紙やファイルを使用した方法や、PCや表計算ソフトを使用した場合のイメージ画像

QDAソフトを使用しない場合、元データとの連携やデータの保存、加工が問題になりがちです。

しかし、QDAソフトを使えば、こうした元データのコピー&ペーストという作業は不要になります。 さらに、コーディング結果から元データを簡単に参照できます。この部分はどういった文脈だったのか等、元データを参照したくなったときの行き来もカンタンです。

NVivoでは、発言者ごとに自動でコーディングすることも可能なので、特定の発言者の発言を抜き出すといったことも簡単です。
参考:NVivo 自動コーディング 発言者ごとのコーディング

・分析過程の可視化

作業ログが残るため、どのような作業をおこなったかを後で確認することができます。 コーディングの元データ参照、作業ログの参照が可能なので、研究結果の妥当性を、すぐに第三者にエビデンスとして提示することも可能です。

QDAソフトを使用すると研究のトレーサビリティを向上させることができます。

・データ分析支援

グラフ等の可視化機能を使用したチャート

 

頻出語の可視化、ワードツリー、グラフ作成などで様々な要素を可視化・比較することが可能です。質的データを集計して量的化することもできます。 ミクロとマクロの視点を容易に行き来できるので、より正確で客観性のある分析が可能になります。

また、自分では気付かなかった、データに潜在する予想外のトピックを発見することも可能です。

日本国内におけるQDAソフトの普及

QDAソフトの誕生は1980年代まで遡ります。長い歴史を持ち、世界中の多くの研究者に馴染みのあるQDAソフトですが、日本では現在に至っても、様々な国と比較して普及が進んでいません。その背景には、多くのQDAソフトは2005年前後まで2バイト文字の言語である日本語に対応しておらず、日本語の研究に使用できなかったという問題があります(佐藤郁哉,2015)。

現在ではUnicodeに対応し、日本語を含め様々な言語で使用することが可能になっています。しかし、日本では現在でも、QDAソフトを活用したすぐれた研究事例が、同種のソフトウェアの本格的な普及の契機となるに足るだけの「クリティカル・マス」を形成しているとは言い難い状況であると佐藤郁哉氏は述べています(佐藤郁哉,2015)。

研究におけるQDAソフトは、しばしば執筆におけるワープロに例えられます。ワープロの登場は文章の記述・編集を容易にし、執筆者の負担を軽減しただけでなく、編集の容易さから創造性にも寄与しています。QDAソフトを使用しないで質的研究をおこなうことは、執筆する際に原稿用紙にペンで書いていくのに等しいといえるのかもしれません。

根本的にはCAQDASはデータベースだが、ほとんどのデータベースよりはるかにうまくデータの処理を支援してくれる。そして、研究者が自分のひらめきやアイデア、検索や分析の結果をうまく記録するのを可能にし、分析できるようにデータにアクセスしやすくしてくれる。(Gibbs, 2017)

QDAソフトの可能性と限界

QDAソフトは効率良くデータを整理、分類することで最終的に人間の分析を支援します。物理的な制約やデータ処理上の技術的な問題などから解放し、より効果的な分析を可能にします。 しかし、質的データ分析におけるもっとも本質的な手続きである、重層的な文脈の解明および現場の言葉と理論の言葉の往復という2つの作業、それ自体を自動化することはできません。

QDAソフトによくある誤解として、「データを入れると結果が出てくる」、「ソフトが分析、解釈するのであれば質的研究とはいえない」などがあります。QDAソフトはデータを整理して纏めることはできますが、最後は人間が分析、解釈しなければなりません。

コンピュータは代わりに解釈することはできない。結局、解釈を導き出したり、分析の説明を作り出したり、そして適切な理論によって分析全体を指示したりするのは人間の研究者の責任なのだ。(Gibbs, 2017)

QDAソフトはデータの収集や、整理、分析、アイデアの獲得を支援するツールです。 研究のデータに関わる手続きをソフトウェアが効率化することで、人間の効果的・効率的な分析を可能にする。そこにQDAソフトの特長があります。

 

 

QDAソフトの代表的ソフトであるNVivo

「NVivo」は質的データを扱う定性研究や、質的データと量的データを組み合わせた混合研究法(ミックスメソッド)をサポートする、QDAソフトの定番です。世界150か国以上の大学・研究機関で使用されています。オーストラリア・ニュージーランドの全大学や、世界中の大学・研究機関に機関導入されており、質的データを扱う研究では欠かせない存在として、日々の研究を支えています。

「NVivo」はコーディング機能を概念の構築手段としてのみ捉えるのではなく、量的データとの関連づけや自動コードにも使用することで混合研究法やテキストデータの計量的な分析に対応し、質的データの分析をサポートします。

Nvivo 12 ロゴ

参考文献

Gibbs, G. R., 砂上史子, 一柳智紀, & 一柳梢. (2017). 質的データの分析 (Vol. 6): 新曜社 稲葉光行・抱井尚子,2011,「質的データ分析におけるグラウンデッドなテキストマイニング・アプローチの提案― がん告知の可否をめぐるフォーカスグループでの議論の分析から ―」『政策科学』.18巻 3号 P.255-P 276
佐藤郁哉,2015,「質的データ分析の基本原理と qdaソフトウェアの可能性( 特集 労働研究と質的調査)」『日本労働研究雑誌』57(12):81-96
樋口麻里,2017,「質的データ分析支援ソフトウエアの機能と背景にある考え方―Atlas.ti7 と NVivo11 の比較から」『年報人間科学』. 38 P.193-P210
樋口麻里,2018,「質的調査法の教育におけるQDAソフトウェア利用:MAXQDA12を事例として」『年報人間科学』. 39 P.29-P43


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