若手研究者のためのオープンアクセス出版ガイド

近年、オープンアクセス(OA)は着実にその勢いを増しています。ジャーナルや出版社の多くはOAでの出版を行なっており、著者の選択肢も広がってきています。しかし、多くの研究者(とくにキャリアの浅い研究者)は、いまだにOA出版に対してぼんやりとした印象を抱いています。

OAって何?OAで出版する意義は?OA出版にはどんな選択肢があるのか?このような疑問が頭をよぎり、その答えが不明瞭であるために、OAに対して懐疑的になりがちなのです。

今回の記事で、OA出版の基本を学びながら疑問点を解消していきましょう。

オープンアクセス(OA)とは?

OAは科学研究をすべての人に無料で公開し、その知見を利用しやすい環境を作ることで科学の発展を促進することを目的としています。これまでの学術出版界では購読モデルが採用され、読者がコンテンツに対して料金を支払ってきました。また、学生などの利用者が論文を読めるように、図書館がさまざまなジャーナルを購読するのが一般的でした。

しかし、購読料が高騰しはじめ、図書館が高価なジャーナルを揃えることが難しくなってきています。資金調達を満足に行えない途上国の図書館や研究機関にとってはなおのことです。その結果、読みたい論文を入手できない研究者が多く現れ、科学の発展にも影響を及ぼしはじめました。

この障壁を取り除くものとして、再利用が許可された状態で出版される論文に、無制限かつ迅速にアクセスできるOA出版モデルが生まれたのです。

OA出版にはどのような種類がある?

OA出版には、大まかに分けてゴールドとグリーンの2種類のモデルがあります。

(1)ゴールドOA

このモデルは、査読済みの論文を無料で読者に提供し、出版費用は著者側(所属機関や資金提供者を含む)が負担します。現在、ほとんどの大手出版社はOA出版の選択肢を用意しており、OAを専門とするPLOSのような出版社も存在します。また、複数あるOAジャーナルのディレクトリの中でもっとも有名なDirectory of Open Access Journals(DOAJ)では、研究分野ごとのOAジャーナルを検索することができます。

ゴールドOAモデルの中にも、さまざまなジャーナルの選択肢があります。

「フルOAジャーナル」
このタイプのジャーナルで出版されたすべての論文は、ウェブサイト上に無料で公開されます。学術機関や学会、あるいは政府からの助成で運営されている場合もありますが、論文を出版する段階で、いわゆる論文掲載料(article processing charges、APC)を著者に要求するジャーナルもあります。

「ハイブリッド・ジャーナル」
このタイプのジャーナルに掲載されている論文の多くは有料購読型で、一部のコンテンツのみが無料公開されています。論文をOAで公開するには、著者が追加料金(オープンアクセス費、open access fee)を支払う必要があります。ハイブリッドOAのジャーナルには、iOpenAccess(Taylor & Francis)、Online Open(Wiley)、Sage Open(Sage)などがあります。

「ディレイドOAジャーナル
このタイプでは、論文の出版後一定の期間が経過すると、無料で公開されます。論文が有料の期間は公開猶予期間(embargo period)と呼ばれ、その期間は6〜12ヶ月程度が一般的です。

(2)グリーンOA

グリーンOAとは、著者が購読型ジャーナルで論文を出版し、同時にOAのリポジトリにも保存するというものです。これをセルフアーカイブ(self-archiving)と呼びます。したがって、ジャーナル自体は購読が必要ですが、読者はリポジトリ経由で自由に論文にアクセスできます。この方式は、OAジャーナルでの出版費用を捻出できない著者によく利用されています。

ただし、リポジトリに登録される段階では、論文が査読されていない場合もあります。また、購読型のすべてのジャーナルが、論文をリポジトリに保存することを許可しているわけではありません。各ジャーナルのウェブサイトでセルフアーカイブが認められているかを確認し、セルフアーカイブを行う場合は事前にジャーナルの同意を得ることが望ましいでしょう。

リポジトリは、研究機関が提供するものと独立したもの、 専門分野に特化したもの(bioRxiv、Nature Precedings、PubMed Centralなど)、複数分野を対象としたもの(arXiv、Global Open Access Portal、Zenodoなど)があります。また、OpenDOARのように、OAのリポジトリのリストを提供するディレクトリもあります。

リポジトリでセルフアーカイブできる論文は、基本的には以下の3種類です

  • ・プレプリント: 査読前の論文
  • ・ポストプリント: 査読済みおよび著者による修正済みで、出版社の校正が入る前の論文
  • ・パブリッシャー版: 冊子体またはオンラインで公開されている、出版社による校正後の最終版PDF

オープンアクセスに関するよくある誤解

冒頭で述べたように、研究者はOAでの出版について懐疑的になりがちです。これは、頭の中にOAへの誤解があることが大きな原因となっています。以下でそれらの誤解を解消していきましょう。

1. OAジャーナルには査読がない
これは完全な誤解です。ジャーナルが定める査読方針と公開方針はまったく別のものです。実際は、ほとんどのOAジャーナルが査読を行なっています。

2. OAジャーナルはインパクトファクターが低い
これも誤解です。多くのOAジャーナルが出版する論文は多く引用されており、高いインパクトファクターを獲得しています。たとえば、Living Reviews in Relativityのインパクトファクターは32(JCR-2015)です。また、インパクトファクターがジャーナルの質を表す最良の指標ではないことも忘れないでおきましょう。

3. OAジャーナルは出版費用が高額
高額なAPCの支払いが足枷となり、OAジャーナルでの出版を断念する著者は多くいます。しかし、すべてのOAジャーナルがAPCを請求するわけではなく、請求する場合も通常はウェブサイト上でその旨を明記しています。料金はジャーナルによってさまざまで、必ずしも高額というわけではありません。

さらに、APCを負担してくれる大学や助成団体も多く存在します。また、発展途上国の研究者や資金調達が困難な研究者には、ジャーナルが支払いを免除してくれるケースも少なくありません。ネイチャー・パブリッシング・グループが出版するジャーナルの多くは、APCの免除指針を定めています。

4. OA出版は著作権保護や著者に対するクレジットを提供していない
実際は、PLOS や BMJなどの多くのOAジャーナルは、出版後の著作権を著者に付与しています。また、ほとんどのOAジャーナルがクリエイティブ・コモンズ・ライセンス(CC licence)を使用しており、研究が再利用された場合のクレジットは、必ず著者に与えられるようになっています。

まとめ

キャリアが浅い研究者にとって、OA出版の重要性を理解しておくことはとても大切です。研究成果への迅速かつ無制限なアクセスが可能でなければ、科学の進歩はありません。

近い将来、研究者たちがOA出版に対してより積極的になり、科学コミュニティだけでなく、政治や一般の世界にも研究の恩恵が行き届くような環境が実現することが期待されます。

 

 

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